漫画史に燦然と輝く名作『ジョジョの奇妙な冒険』。その長い歴史の中で、ファンの間で30年以上語り継がれ、今なお強烈な存在感を放ち続ける伝説のセリフがあります。それが、主人公ジョナサン・ジョースターが放ったとされる迷言「何をするだァーッ」です。
本来であれば緊迫感あふれるシリアスな名シーンでありながら、たった一文字の脱字によって生まれたこのフレーズ。なぜこれほどまでに読者の心を掴み、ネットミームとして定着したのでしょうか。連載当時の背景から単行本やアニメでの修正経緯、そして令和の今も愛される理由まで、その全貌を解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「何をするだァーッ」は『ジョジョ』第1部連載初期に発生した「何をするんだァーッ」の誤植が元ネタ。
- 要点2:ジャンプ掲載時から単行本初期まで残っていたが、後の重版や文庫版、アニメ版では本来の正しいセリフに修正済み。
- 要点3:主人公ジョナサンの激しい怒りと語感の奇妙さが絶妙にマッチし、作品を代表する伝説的ネットミームとして定着。
【元ネタと場面】愛犬ダニー蹴撃シーンで放たれた魂の叫び
「何をするだァーッ」が登場したのは、記念すべきシリーズ第1部『ファントムブラッド』の序盤です。ジョースター家に養子としてやってきたディオ・ブランドーが、出迎えに駆け寄ってきたジョナサンの愛犬ダニーの顎をいきなり膝蹴りで跳ね上げるという、衝撃的なファーストコンタクトの場面で飛び出しました。
無抵抗な愛犬を理不尽に傷つけられたジョナサンが、激しい怒りとショックを露わにしてディオに詰め寄る緊迫の瞬間。本来意図されていた正しいセリフは「何をするんだァーッ」でしたが、文字の脱落によって「何をするだァーッ」として紙面に刻まれることになりました。
【誤植の真相】なぜ生まれた?「週刊少年ジャンプ」過酷な制作現場
この歴史的誤植が世に出たのは、「週刊少年ジャンプ」1987年1・2合併号。連載第1話という、まさに作品の命運を分ける極めて重要な回でした。
当時の少年ジャンプは空前の発行部数を誇り、編集部や印刷所は毎週が修羅場でした。漫画の写植(セリフの文字貼り作業)はすべて手作業で行われており、どれほど厳重に校正を重ねてもヒューマンエラーをゼロにするのは困難な時代です。「ん」の一文字が抜け落ちたまま製版工程を通過してしまった背景には、当時の現場の凄まじい熱気と過密スケジュールがありました。
【修正の経緯】ジャンプ連載から単行本・文庫版・アニメへの変遷
雑誌掲載時に生まれた誤植は、その後どのように扱われていったのでしょうか。メディアや版を重ねるごとの変遷を追うと、集英社側の細やかな対応の軌跡が見えてきます。
ジャンプコミックス(単行本)第1巻の初期印刷分では、雑誌掲載時の勢いそのままに「何をするだァーッ」が残されていました。しかし、後の増刷分および文庫版コミックスの刊行に合わせて、作者・荒木飛呂彦氏の意図通り「何をするんだァーッ」へと順次修正されています。
さらに、2012年に放送されたTVアニメ版『ジョジョの奇妙な冒険』第1話においても、声優の興津和幸氏が「何をするんだァーッ!」と正しく熱演。アニメでは誤植版が採用されることはなく、原作者のプロットに基づいた正しいセリフ回しが徹底されました。
【ネットミーム化】なぜ読者は「奇跡の誤植」を愛し続けるのか
修正によって公式表記からは姿を消したものの、ネット上での人気は衰えるどころか加速していきました。2ちゃんねる(現5ちゃんねる)をはじめとするコミュニティでは、予想外の理不尽なトラブルに遭遇した際の定番リアクションとして定着しています。
愛され続ける最大の要因は、「緊迫した場面」と「脱力感のある語感」の絶妙なギャップにあります。英国貴族の誇り高き少年が放つ激情の叫びが、東北弁のような素朴な響きを帯びてしまった面白さ。その独特のリズム感が、荒木作品特有のダイナミックな擬音や名セリフ群と奇跡的な親和性を生み出し、ファンの記憶に深く刻み込まれました。
【荒木飛呂彦作品の魅力】誤植すらも伝説の「味」に変える人間ドラマ
荒木飛呂彦氏が描く『ジョジョ』シリーズには、「メギャン」「ズキュウウウン」といった独創的な擬音や、「そこにシビれる!あこがれるゥ!」に代表される独特の言い回しが数多く存在します。
言葉の持つ力強さやリズムを極限まで突き詰める荒木ワールドだからこそ、偶然生まれた誤植さえも「ジョナサンなら極限状態の怒りで舌がもつれてこう叫んだのかもしれない」と読者に解釈させるだけの説得力を持っていました。ミスすらも作品の持つ圧倒的なエネルギーに取り込んでしまう懐の深さこそ、本作が時代を超えて熱狂を生み続ける理由です。
【何をするだァーッ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:作者の荒木飛呂彦先生はこのセリフをわざと書いたのですか?
A1:いいえ、意図的な演出ではなく制作過程で発生した誤植です。ネーム段階のセリフ「何をするんだァーッ」から写植作業時に「ん」が抜けてしまったもので、現在は公式に本来のセリフへ修正されています。
Q2:いま書店で買える単行本では「何をするだァーッ」を読めますか?
A2:現在流通している紙の単行本重版分、文庫版、電子書籍版はいずれも「何をするんだァーッ」に修正されています。誤植版を紙で読むには、1980年代後半に印刷された最初期のジャンプコミックス第1巻や当時の連載誌を探す必要があります。
Q3:ゲーム作品などでは誤植バージョンが使われることはありますか?
A3:原則として公式監修が入るメディアミックス作品(アニメやゲームなど)では「何をするんだァーッ」の正しいセリフが採用されます。ただし、開発陣のファンサービスやパロディ要素として、小ネタレベルで言及されるケースは過去に見られました。
まとめ:30年以上愛され続ける「奇跡の誤植」が残したもの
出版印刷の過渡期に生まれた「何をするだァーッ」は、単なる制作上のミスという枠組みを超え、作品の黎明期を象徴する伝説的なエピソードとして定着しました。
デジタル化が進み校正の精度が飛躍的に向上した現代では、こうしたインパクト抜群の誤植がそのまま世に出る機会は激減しています。だからこそ、当時の熱気と人間味あふれる現場の空気感を伝えるこのフレーズは、これからも『ジョジョ』を愛するファンたちの間で親しみを込めて語り継がれていくはずです。 (出典: 何 を する だ ァーッ(Yahoo!ニュース))